他社商品との差別化を図りたいとき、「業界初」「世界初」という表現はお客様に効果抜群です。そう表現できる商品は、非常にハイレベルな技術による機能が搭載されているものだけだと、思い込んでいる人も多いでしょう。キーエンスでは特許技術を用いずに、次々と「業界初」「世界初」を謳う新商品を生み出していますが、そのカギは「製販一体」にあります。キーエンス式の「業界初」「世界初」の商品の生み出し方をキーを教えます。

特別なテクノロジーなし!「業界初」をつくるテクニック

お客様に商品を提案するとき、「こちら、業界初の商品です」「世界初の技術が使われています」と伝えることができたなら、他社商品との大きな差別化につながります。

キーエンスにおいては、新商品のうちの実に7割以上が「業界初」または「世界初」と言えるものです。そう聞くと、「キーエンスには優秀な開発者が多くて、抜きん出て高い技術力があるから、業界初・世界初の商品がどんどんつくれるんでしょう?」と思う人もいるでしょう。しかし、キーエンスの「業界初」「世界初」の商品は、特許技術のように特別なテクノロジーを用いてつくられたものだけではありません。考え方の工夫次第で生み出せるものなのです。

キーエンスがお客様に提案する「業界初」「世界初」は、お客様の潜在化していたニーズを叶えるために搭載された、いままでになかった機能のことを指しています。では、どのようにして“いままでになかった機能”を実現するのか——それは、世界のどこかにある既存の技術にアイデアを組み合わせているのです。

キーエンスが数年前に新商品としてお客様にご提案していた「業界初のPLC(工場の機械の動きをコントロールするプログラミング機器)」を例に、どのようにして「業界初」を実現するのかをお話ししましょう。PLC自体は他社メーカーでも取り扱いがありますが、キーエンスの商品はオプション機能として搭載した「ドライブレコーダー機能で、設備停止前後の設備情報をすべて記録」というものは、業界初であり世界初のものでした。

これは、お客様の「エラーが起こった原因を解明するための人件費と手間を減らしたい」「人だけでは見抜けないエラーの原因をデータから解析したい」というニーズから生まれた機能だと想定されます。もし工場の機械にエラーが起こった場合、エラーの原因を解明するためには、工場長か現場担当者が再びエラーが発生するまで機械を見張らなければなりませんでした。エラーの瞬間を確認するために、次いつ起こるかわからないエラーを待ち続けるには、拘束時間も手間もかかります。もし、エラーが起こったタイミングの動画やデータを残すことができたなら、エラー待ちの時間も削減でき、そして再稼働するまでに失ってしまう売上も軽減することができるのです。

この問題を解消する「業界初」「世界初」の技術をキーエンスはどのように搭載したかというと、既存のドライブレコーダーの技術を応用したわけです。ドライブレコーダーが事故の衝撃を検知した前後の動画を録画しているように、PLCにおいてもエラー前後の動画やデータを録画・記録できるように設計したのです。「アクシデントが起こった瞬間の動画を録画する」というアイデアや技術自体は、皆さんもご存じの通り、自動車業界では当たり前に取り入れられてきたものですが、製造業界においては、当時どこも取り入れていなかったため「業界初」「世界初」と言えたのでした。