お客様のニーズを実現するためには、自社内の関係各部署の協力が不可欠。では、どのように根回しをすれば、自分のお客様のために社内の人たちがスムーズかつ全力で取り組んでくれるのか。また、「根回し術は、お客様の社内側にも使える」と田尻氏は言います。根回しするのに必ず押さえるべきポイントを教えます。

根回しするなら、各部署の役割・責任・能力を正確に把握せよ

お客様のニーズを叶えることは、営業だけの力ではできません。自分の会社の関連部署に働きかけ、ニーズを実現するためにきちんと動いてもらえるよう、社内調整を行う必要があります。自分のお客様のために一所懸命動いてもらうための「根回し」も、営業パーソンがやらなければいけない大事な仕事のひとつです。

自社内で「根回し」をするにあたって必須なのは、各部署の「役割」「責任」「能力」を明確に把握することです。誰がどの役割を持っていて、どの責任を持っている人なのか。どれくらいの能力がある人なのか。これがわかれば、社内のどの人に、どのようなアプローチで案件を共有すれば、ちゃんと動いてくれるかが明確になります。

キーエンスの場合はその点、社内調整は簡単です。というのも、ものすごく細かく、「役割」「責任」が決まっていて、それが明文化されているからです。「海外販促の仕事は誰の担当」「商品企画の仕事は誰」というように、全部の仕事の担当が明確に決められていて、上司に「この件は誰に言ったらいいでしょう?」と尋ねれば、「本社の○○さんっていう人に言ったらいいよ」と、一瞬で答えが返ってきます。

ただ、通常の会社では、このようにはできていないでしょう。大企業であれば「あの部署、何をやっているところなのか、ちょっとよくわからない」ということがあったり、そうでなくても「普段あの人の部署って、なんとなく何やっているかはわかるけど、明確なミッションが何なのかは知らない」ということもあるのではないでしょうか。そこで重要になってくるのが「組織把握」です。誰がどんな役割と責任と義務を持っており、誰がどんな能力を持っているか、把握する。組織把握なしに根回しはできないので、まずはそこからはじめましょう。