組織に属していれば、赤字確定の事業を任されたり、あまりにリスクが高い企画を持たされたりすることもあります。そのような筋の悪い任務を打診されたとき、どう対応すればいいでしょうか? 会社員はどんな事情があろうと会社の命令に従うものだとばかり、悲哀を噛み締めるサラリーマンの鑑を演じるのか、それとも何かうまくかわす方法があるのか、心理学の見地から対処法をアドバイスします。
自分の価値観に合わない仕事なら断ってもいい
ある日、「人員整理の責任者になってくれないか」という命令が下されたら、どうしますか? 会社員である以上、そういう日が来ないとも言い切れません。しかし、きつい任務ですよね。なんとか断りたいというのが本音でしょう。
もし断りたいのであれば、ポイントは自分にはその任務が適していない、ということをいかにうまく訴えることができるかというところになります。
「自分は情を大事にしてきた人間だから、この役目は果たしきれないと思います」「うまく任務を全うできないとご迷惑をおかけすることになってしまいますし」と訴えて、確かにそうだなと会社に納得してもらえるなら、それが一番いいことです。
しかしそれでもおまえにやってほしいとなれば、そこは自分の生き方や価値観に照らし合わせて考える必要があります。
まず見定めたいのは、それは本当にあなたにしかできない仕事なのか、それともただの貧乏くじなのか、というところです。これまでの経緯があって、あなたしかできないことなら、腹をくくるしかありません。
もしも「誰でもいい仕事」で、なおかつ自分には務まらないと思うなら、断ってもいいと思います。会社の命令に背く以上、出世コースからはいったん外れるかもしれませんし、左遷されるかもしれません。それでも自分の価値観に反する生き方を無理にして、後味の悪い人生になるよりはましだと、腹をくくってもいいと思います。一度しかない人生、後ろめたい思いを引きずりたくないものです。
それで評価を落としても、
「これから自分の実力で、またのし上がってやろう」と思えばいいのです。
こういう仕事に伴うストレスは相当なもので、たとえやり遂げることができても、精神的な消耗度ははかりしれません。体調を崩すこともあるでしょう。そんな非生産的なことで消耗するより、自分らしい、気持ちいい働きをしたほうが、長い目でみれば自分のためになるはずです。
ただ、こういう筋の悪い仕事ばかりが回ってくるとしたら、ちょっと考えなければいけないでしょう。会社から「こいつなら断らないだろう」と見透かされている可能性があるので、こちらの態度を改める必要があります。
いくら上司の頼みでも、何のためらいも抵抗もなく受けてばかりいると、都合よく使える便利な人としての評価が固定してしまいます。承服できないものなら断るというカードを切ることも、人生には必要です。それは自身の健康や幸せのためにもなります。
大企業の場合は、何年かすればトップが代わります。それまで冷や飯を食わされても、トップが代われば方針も変わり、評価も変わるでしょう。逆境の中でも実力を発揮していれば挽回できる日も来ます。