Part 1では社内のライバルとの向き合い方を、Part 2では営業の得意先との交渉について学んできました。Part 3では、上司・部下間のかけひきについて学びます。

 上司と部下は、毎日仕事を一緒にする人間関係です。言いたいことをストレートに伝えるだけでは相手が動いてくれないことは悩みの種ではないでしょうか。

 どう伝えれば相手が動いてくれるのか、孫子の教えをひもときましょう。

役員に上司への不満を訴えた後輩

ここで問題です。

あなたの上司は、部下の言うことに耳を傾けることもなく、いつも独断専行で自分の意見を押し付けてきます。あなたはその上司から厳しく叱責されることも多く、何とかこの上司にリベンジすることはできないかと考えていました。

そんなときに、担当役員があなたの部署全員と個別面談をする機会がありました。あなたは「何か要望はないか」と聞かれても「特にありません」と答えたのですが、後輩のH君は、「360度評価を取り入れて欲しい」と訴えたそうです。面談後、H君は「部下が上司を評価する360度評価があれば、上司の態度も少しは変わるだろうと思って役員に言ってやりました」とあなたに自慢げに報告してきたのです。

さて、あなたはこのH君の言動をどう思いますか?

A:H君もあの上司に対して不満があったのだろう。役員によくぞ言ってくれた。たしかに360度評価があれば、あの上司に低い点をつけてリベンジすることもできる。
B:あの上司に不満があるのはわかるが、H君は無礼講と言われて鵜呑みにするタイプだと思う。人事部との面談ならまだしも担当役員に上司に対する不満があるようなことを言ってしまうのは脇が甘いとしか言いようがない。役員に不満分子として認識されてしまっただろうし、上司本人にもH君の発言が伝わっているかもしれない。

どうでしょうか。素直に考えれば、役員から「何か要望はないか」と聞かれたわけですから、思っていることを言えば良いでしょうし、それを受けて会社として何らかの改善がなされることもありうるでしょう。しかし、相手が役員であれ、上司であれ、聖人君子のような人はいません。だからこそ上司への不満も生じるわけです。

もしあなたに部下がいて、その部下が「部下も上司を評価できるように360度評価を取り入れてください」と言ってきたら、あなたはどう思いますか。余程自信があれば別ですが、わざわざ上司であるあなたに、上司の評価を下げることを可能にする要求をしてきたわけですから、まず「こいつは私に対して何か文句でもあるのか」と疑いたくなるのでは?

そしてその部下に対して、「バカ正直なのか、考えが足りないのか、相手への配慮ができないのかわからないが、大事な仕事は任せられないな」と思うのではないでしょうか。

この講座は、孫子の兵法で、「自分の要求を通しまくる技術」ですから、人の心の裏を考えていきましょう。