「マインドフルネス」に対してみなさんはどのような印象を持っていますか? なかには、「スピリチュアルっぽいし、なんだか怪しいなあ」と思っている人もいるかもしれません。しかし、科学的研究が進んだ結果、マインドフルネスには様々な効果が確かにあることがわかってきました。その効果のなかには、「ネガティブな記憶をつくらない」というものも存在します。
「判断しない」ことで、ネガティブな記憶を未然に防ぐ
マインドフルネスは、もともとは仏教の概念であり、チベット仏教の僧侶たちが行う瞑想法です。そこに科学のメスが入り、集中力や幸福度の向上、メンタルの安定といったことに確かに役立つということがわかってきました。
瞑想を長年のあいだ続けてきた、マインドフルネスの達人ともいえる僧侶の脳の活動をMRIで調べてみると、脳のなかの幸福を感じる部分が著しく活性化していることがわかったのです。
そうした研究が進んだ結果、もう10年以上も前から、GoogleやApple、ゴールドマン・サックスなど世界的な一流企業が、マインドフルネスのプログラムを社員研修に取り入れるようになりました。
ビジネスパーソンのみなさんなら、そんな話を知っている人も多いでしょう。そして、それらの企業が大きな成果を挙げていることはいうまでもありません。そういった事実を受け、マインドフルネスに対して「怪しい」という印象を持つ人は減ってきているのだと思います。
マインドフルネスの基本は、いまこの瞬間の感覚に意識を向けて「判断をしない」ことにあります。なんらかの事象に対して、プラスかマイナスか、善か悪かといった判断をしない。事象はただ事象としてそこにあり、それを見つめることだけに徹するのです。
このことが、ネガティブな記憶をつくらないために有効に働きます。つらい、苦しい、悲しい、腹立たしいといった思いをした経験は、そのまま放っておくとネガティブな記憶として定着してしまいます。でもそこで、「これは自分にとってネガティブな経験だ」と判断しなければ、その経験がネガティブな記憶になってしまうことを未然に防ぐことができるというわけです。