みなさんには忘れたいことはありますか?「覚える」ことに秀でた記憶のスペシャリストにも、これまでに忘れたいことがあったのだそうです。そんな過去のネガティブな出来事には、どのように対処すべきでしょうか。
フラッシュバックには必ずきっかけがある
あまりにプライベートなことなので具体的なエピソードをあかすことは避けますが、わたしにもネガティブな思い出があります。そのことを思い出すと、当時のネガティブな気持ちがよみがえり、後悔の念が湧いてきたものです。
みなさんにもきっと、ひとつやふたつ、そんな経験があることでしょう。ふとしたことがきっかけで思い出したくもないそのときの光景を思い出してしまう。いわゆる、フラッシュバックというものです。
では、それが起きる「きっかけ」とは何でしょうか? 思い出す出来事に少なからず関係があること、例えばその出来事が起きた場所を訪れたとか、その場にいた人に会うといったことがないにもかかわらず、突然フラッシュバックに襲われたことがある、という人もいるかもしれません。
でもおそらくは、確かに何かのきっかけがあったにもかかわらず、自分ではそれに気づいてなかっただけなのだと思います。フラッシュバックには、必ずきかっけが存在します。そのきっかけは様々ですが、もっとも強いものは「におい」だとされます。
わたしたちには、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚という五感があります。それぞれ、目や鼻などの感覚器から入った情報が、それぞれの神経回路を通じて脳に届くことで認識します。そのルートは、基本的にそれぞれの感覚ごとに1本なのですが、嗅覚は例外なのです。
嗅覚だけが、2本のルートを持っています。他の感覚と同じ固有のルートと、それに加えて、脳のなかの記憶の中枢である「海馬」という部分が存在するエリアにダイレクトに届くルートがあるのです。そのため、においは記憶と強く結びつきやすく、フラッシュバックのきっかけにもなりやすいのです。