部下に仕事を任せるときは、ひとりの部下に任せるシチュエーションばかりではないと思います。ふたり、または3人でチームを組む場合はもちろん、大所帯の部署を束ねているリーダーであればプロジェクトチームとして部下をアサインすることもあるでしょう。これまでにお伝えした「1on1マネジメント」と「童話マトリックス」の考え方を駆使し、最良のチームマネジメントを考えていきます。

チームにおいて輝くタイプごとの特性を活かす

1on1マネジメントにおいて、部下それぞれの性格や特性、本人の意向に応じた「適材適所」の仕事を振っていくことが、モチベーション高く仕事に取り組み、長所を活かして活躍できるポイントであることを、以前の連載でもお伝えしました。短所を克服することも成長には大切ですが、弱みをカバーできるくらいに長所を伸ばしていくことで、自己肯定感・自己効力感が高まり、健全な成長を遂げることができます。

最終回となるこの回では、「適材適所」を発展させ、「目的に合わせたチーム編成」を見ていきます。

タッグ、またはチームで取り組む案件への部下のアサインを行う際に、ただ手の空いている部下を組ませるのでは、マネジメントとしては雑といわざるを得ません。部下それぞれの特性を理解し、ポーカーでいえばロイヤルストレートフラッシュのような最強の組み合わせを考えることが、リーダーの腕の見せ所です。しかし、事例を挙げようと思えば無数のパターンになりますので、ここでは絞ったかたちで例を紹介したいと思います。

●企画力の「キリギリス」、実行力の「アリ」をフェーズごとに活かす

わたしの会社は、わたし自身を含めて社員は計7名です。そのなかで、新規事業や新企画など「これまでにない新しいことをやろう!」と思ったときは、まず「うさギリス」のわたしと社員のMさん、そして「かめギリス」のSさんの「3人のキリギリス」でブレストを行います。

この3人で話すと、「あれもやろう」「これもやろう」と企画会議がとても盛り上がるからです。なぜなら、キリギリス系タイプは、いま現在における忙しさ、現実的な予算、目の前のリソースといったものにとらわれずに未来の楽しいビジョンを描くことが得意だからです。

ですから、この会議に「かめアリ」のような現実志向の人を加えると、その話を聞いているだけでストレスが溜まるようです。「かめアリ」は、「そんなの誰が担当できるの?」「スケジュールがさすがに厳しいでしょう?」と歯止めをかけてしまうので、アイデア会議が盛り上がらなくなってしまいます。

でも、企画を計画段階、実行段階に移す際には、「3人のキリギリス」でやろうとするとまとまりがなく着地しません。そこで、現実が見えていて実行力のある「うさアリ」や計画性のある「かめアリ」が実行部隊として活躍してくれます。

こうしたメンバーの得意分野の違いを活かせるケースは、たくさんあるはずです。例えば、自社WEBサイトをリニューアルするプロジェクトであれば、キリギリス系をアサインすることで自由な発想で企画を練ってくれます。しかし、コンテンツづくりにおける地道な作業は敬遠したり、放置したりしてしまいがちです。そこにアリ系メンバーも加えることで、実務にも目を向けさせる意識をもたらし、それを担ってくれることも期待できます。

あるいは営業部門であれば、新しい提案方法や新しいサービス企画の可能性も踏まえて業績アップを考えたいのに、会議を重ねても既存サービスの拡販やマニュアルの精度の話に終始してしまう。そこでメンバーのタイプを見てみたら、「うさアリ」「かめアリ」ばかりだった。そんなときは、「うさギリス」「かめギリス」に会議に入ってもらうと、会議の流れが変わる可能性があります。

●「かめ」のチームに「うさぎ」を加え、スピード感を高める

長期的かつルーティンワークの業務にはかめ系タイプが向いているので、わたしの会社では、例えばWEBサイトの更新作業や、オンラインサロンの運営などは「かめアリ」と「かめギリス」の社員に任せています。でも、コツコツと堅実な仕事を安定的にこなしてくれる反面、短期での対応が求められる案件ではスピード感に欠ける面が否めません。そんなとき、「うさアリ」や「うさギリス」をひとりメンバーに加えると、かめ系チームを牽引し、業務スピードに好影響を与えてくれる場合があります。