これまで14話にわたってお伝えしてきた童話マトリックスに基づく1on1マネジメントは、「部下との円滑なコミュニケーション」ができることが前提です。仲良しではなくとも一定の信頼関係があればこそ、あなたの指導やアドバイスを部下は聞き入れてくれるのです。では、信頼関係とはどのようにして育めばいいのでしょうか。「童話マトリックス」からいったん離れ、信頼関係構築のためのテクニックについて、2話にわたってお伝えします。

「信頼残高」を積み上げる6つの方法

「信頼残高」という言葉を、みなさんはご存じでしょうか? 20世紀を代表するビジネス書といわれるスティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』(キングベアー出版)に出てくる言葉で、あなたが積み上げた、相手との信頼関係や安心感のことを指します。

部下との信頼残高がなければ、1on1マネジメントは成立しません。コミュニケーションを図ろうとしても嫌がられ、本心を語ることもないのですから、部下のパーソナリティも、やりたいことも、いまの気持ちや悩み、不満を理解することもできません。少し核心に触れたことを言えば機嫌を損ね、ウザがられてしまうのでは、マネジメントのしようもありません。童話マトリックスでタイプや考え方がわかったところで、それより先に進めないのです。

ですから、これまでみなさんにお伝えしてきた1on1マネジメントを成立させるには、部下との信頼残高を積み上げることが大切です。

信頼関係は一日にしてなりません。いきなり意気投合して十年来の友人のような関係になるということもなくはありませんが、基本的に時間を要します。コヴィー氏によれば、信頼残高の積み上げには次の6つが必要なのだといいます。

人は自分の存在を認め、自分を傷つけない人に安心感を抱き、また自分に関心を持ち、尊重してくれる人に好意を抱きます。その積み重ねが信頼関係へとつながっていくのです。まずは、これを習慣化することが大切です。

コヴィー氏の唱える6つのプロセスを日々の習慣としつつ、加えてわたしからは信頼関係をブーストするふたつのコーチングテクニックをみなさんに紹介したいと思います。今回は「傾聴」、次回で「承認」のテクニックを解説しましょう。