日本酒エキスパート編の最終回。

コロナ禍が落ち着き、海外の重要取引先の来日が頻繁になってきました。相手が日本通の場合、外国人だからといって定番の日本酒で接待をしようものなら、ありきたりすぎて失望されてしまいます。日本酒に対して強い関心を示しているVIPが、必ず満足できる日本酒をご紹介します。

堀越 典子
日本酒ライター
フリーライター。『dancyu』をはじめ、雑誌やWEBメディアで"食と酒"まわりの記事を執筆。特に日本酒を巡る風土、食文化、人に魅せられ、酒蔵訪問ルポやペアリング提案、商品紹介記事を数多く手掛ける。海外のSAKE事情にもあかるく、欧米やアジア、南米など、海外の日本酒蔵を取材で歴訪。現地でのワークショップ開催、SNSによる日本酒の情報発信にも注力する。

親日家VIPは未体験の“サプライズ”を求めている

日本通の海外VIPの接待は、日本ビギナーの海外ゲストのおもてなし以上に気を使うもの。初めての訪日であれば、出身国や宗教、食の嗜好などのバックグラウンドを踏まえつつ、老舗の日本料理店や高級料亭、懐石割烹などに案内するのが接待の王道でしょう。このクラスの店では英語のメニューがあり、料理もサービスも洗練されているうえ、大抵は落ち着いて会食ができる個室を備えています。

和食でもてなすとなれば、海外ゲストは「日本酒を飲みたい」と口を揃えるのが常ですが、このような店では銘醸蔵のハイスペック銘柄を吟味してリストに載せていることが多いため、日本酒のことを詳しく知らなくても店にお任せできる安心感があります。

しかし、親日家VIPが相手となると、話はやや違ってきます。彼らは日本文化全般について造詣が深く、当たり前の伝統や格式、格調にはもはや新鮮味を感じません。料理に合わせる日本酒についても同様です。「有名な銘柄が揃っていれば問題ないだろう」なんて思っていたら、彼らをガッカリさせてしまうでしょう。