他人の夢や希望をことごとくつぶそうとする「ドリームキラー」は意外に多いものです。結果的に他人の夢をつんでしまう行動に出ていることに、その本人も気づいていないこともあります。人の可能性にケチをつけたり、否定したりする人がいてもひるむことなく、自分の信じた道を突き進んでいくためにどうすればいいか、心理学的な見地からアドバイスします。

上司の強烈な引き留めに対してムキになってはいけない

ドリームキラーなどという言葉が広まる背景には、人の夢をことごとくつぶそうとする姑息な人がいるという現実と、単に働いて給料がもらえればよいというのでなく仕事でも夢を追いかけようとする人が出てきているという現実があります。

まず、後者から言えば、今では学校のキャリア教育でも、「夢を持とう」「自分の好きなことを仕事につなげよう」などと言って生徒・学生に好きなこと探しをさせます。そんな時代ゆえに、仕事で夢を実現しようといった風潮が広まっているわけです。ただし、そういう教育を受けている学生でさえ、「好きなことをして食っていけてる大人がどれだけいるんですか? ちょっと疑問です」「食うために仕事を辛くても頑張って、プライベートを楽しむっていうのはいけないんですか?」などと言ってくる学生も少なくありません。私も今のキャリア教育の弊害を常々感じています。

その意味では、あまり夢にこだわりすぎると、どんな仕事をしても不満が募りやすくなるので、注意が必要です。と同時に、夢の追求に対して慎重になるようにアドバイスする人がみなドリームキラーだと決めつけないようにしましょう。じつはそうしたアドバイスを無視して突き進んだ挙句に痛い目に遭うということもあるのです。

つぎに前者ですが、ドリームキラーと言われるような人がいるのも事実ですが、そのような人が人の夢の実現の邪魔をしようとするのは、自分の仕事生活に納得していないからです。人にだけ良い思いをさせたくないといった妬みが、時に人をドリームキラーに変貌させてしまいます。

たとえばあなたが夢に向かって独立したい、もしくは転職したいと言いだしたら、職場では強烈に反対する「ドリームキラー」と化す人も出てくるでしょう。ただし、ほんとうに親身になって考えてくれている人が、慎重に考えるようにと反対してくることもあるので、反対するからドリームキラーだと決めつけるのは禁物です。

まず上司は「独立なんてやめとけ」「転職しても同じことを繰り返すだけだ」と、反対するかもしれません。そういう上司に対して、どう説明すればわかってもらえるでしょうか。

結論から言うと、相手がドリームキラーであっても、親身になってくれている人であっても、夢を理解してもらって、何とか賛同を得ようとムキにならないことです。そこは「ありがとうございます。よく考えてみます」と答えるのが正解です。相手が親身になって考えてくれていると感じたら、その意見にじっくり耳を傾け、自分自身の判断の参考にしましょう。

というと上司から少し引き留められたくらいで再考する程度なら、最初から独立なんて考えないほうがいいではないか、と思うかもしれませんが、必ずしも再考するというわけではありません。

上司としては、自分の部下が不満を持って出ていくとなれば、管理能力がないということで失点になるから引き留めているということもありがちです。その場合はいくら説明しても無駄なので、上辺だけの返事に留めておいたほうがいいということがあります。

そのような保身的な上司の場合、形だけでも「引き留めた」という実績が必要ですから、あれこれと理由をつけて引き留めてくるでしょう。その過程が「ドリームキラー」と言われるゆえんですが、親切心だけで言っているわけではない、ということを理解しておき、あまりムキにならないことです。

それに、万が一転職、独立に失敗したとき、また戻ってこられる可能性を完全に閉ざしてしまわないことも大事なので、できるだけ穏便なやりとりに留めておくべきでしょう。

そこを勘違いして、「私はこんなところに埋もれるような人間じゃない」などと啖呵を切ってしまったら、上司もいい気はしませんよね。そもそも夢があって辞めるというのは、自分の身勝手な行為で、会社に迷惑をかけることですから、こちらがなるべく丁寧で謙虚な姿勢を心掛けるべきところです。

それに、どうしようもなく嫌な上司だった場合は別ですが、縁あって一緒に働かせてもらった上司とは、万一失敗した場合に戻ってこられるようにといった打算だけでなく、良好な間柄を保っておかないと、自分自身としても非常に後味の悪いやめ方になってしまいます。