褒められて嬉しくない人はいない……と思いきや、褒めると困惑したり、こちらの意図を勘ぐる人もいます。なぜこちらの思いをそのまま受け止めてくれないのか、どうすれば素直に聞いてくれるのか、気になる人もいることでしょう。じつは近年「褒める」ことは、難しくなっているのです。そこで今回は、相手にしっかり伝わる「褒め方」についてご紹介します。

疑い深い上司を褒めるときは、エピソードや事例を織り交ぜる

相手が誰であれ、頑張った人や素晴らしいパフォーマンスをした人には賞賛の声をかけたくなります。ところが最近、褒めても喜ばない人が増えています。なぜ素直に受け止めてくれないのでしょうか。

たとえば上司の仕事ぶりに感心して「やっぱり課長はすごいですね」と賞賛したら、「本当にそう思ってる?」と怪訝な顔をされることもあります。それも照れ隠しではなく、本当に怪訝そうに言うのです。

そんな疑い深い人の心理を理解するポイントは2つ。1つは、この上司が部下に心理操作されることを恐れているということです。

最近、アメリカ流の心理操作のテクニックを紹介した翻訳本が日本でもベストセラーになったりして、ビジネス誌などでは関連の特集がよく組まれています。その影響で「人をあやつる」テクニックを真に受けるビジネスパーソンが増えているようです。

そこに紹介されている心理操作術は、相手を騙してでも交渉を有利に進めることを良しとするアメリカ社会では有用かもしれませんが、相手との信頼関係を大事にして交渉をする日本社会にはまったくなじまない内容なのです。

この上司はそういう類の心理操作術の影響を受けている可能性が高いと見るべきです。ということは、この人自身が心の中で、相手をあやつりたいと考えているということでもあります。部下としては、警戒しなければならないでしょう。こういう上司とは本音で付き合えないし、日ごろの発言にも気をつけなければなりません。

もう一つの可能性としては、自分に自信がなく、まさか自分が褒められるわけがないと思っているということです。そんな自分を褒めるには、何か下心があるにちがいないと勘ぐっているのです。

こういう人たちには、なるべく具体的に何がすごいと思ったか、どこが素晴らしいと思ったかを伝えると思いが届きやすくなります。

たとえば「僕なら諦めそうな状況にもかかわらず、慌てず冷静に対処されていたのがとても勉強になりました」とか「取引先からの厳しい要望を理詰めで跳ね返した手腕はさすがです」という感じです。

こうしてエピソードや事例を織り交ぜて褒めれば、口先だけで言っているのではないことがわかり、相手に伝わりやすくなります。