とかくスムーズに行かないことが多い上司と部下との関係。人間関係がうまくいかなければ、仕事中の集中力にも大きく影響するでしょう。わずらわしい人間関係に仕事の邪魔をされないようにするために、まずは集中力を阻害する脳のメカニズムを理解することです。そのうえで起伏を制御して集中力を高める方法について考察していきましょう。
人間の集中力の持続は15分?
人間の「集中力」に関しては、様々な研究がなされています。1つのことに集中している時間のことを「アテンション・スパン」と言いますが、集中力が持続する時間は15分程度というのが通説になっているようです。テレビ番組を見ていると、だいたい15分置きにCMに切り替わります。集中力が続かなくなった時点で、CMに触れてリフレッシュさせるという、理にかなった編成にしているわけです。
また、人間は生まれてから年齢とともに集中力がアップしていき、43歳前後でピークを迎えるという研究結果もあります。40代の中間管理職の方々は、「働き盛りを迎えている」とよく言われますが、集中力の観点でも一番脂がのった時期にいるわけです。
第1話で、チクセントミハイの「フロー理論」を紹介しました。その研究ではフローの状態に入りづらくなる条件がいくつか示されています。集中力を阻害されたくないのであれば、その条件に当てはまらないような真逆の状況をつくっていく手があります。
フローの状態に入りづらい条件の最たるものは、やはり注意が散漫になるような状況に置かれることです。ここまでのセクションで見てきたように、デジタル機器の活用の仕方を見直したり、邪魔が入らない早朝時間を活用したりすることなどがポイントになってくるでしょう。
また、第7話で見たように、仕事の途中で指示が変わると、せっかく興に乗り始めたのに水を差されてしまい、怒りの感情が生じてフローの状態に入れなくなってしまいます。そこでムカッとしても、メタ認知で怒りの火を消し、思考を切り替え適切なタスクマネジメントを遂行してくことが大切です。その際に、自分なりの「作法=ルーティン」を持っておくと心強いでしょう。
例えば、元ラグビー日本代表選手の五郎丸歩さんが、ペナルティーキックの前に必ず決まったポーズをとって集中力を高めたように、感情の起伏を感じたら5秒から6秒くらいの深呼吸をしたり、両手をお腹に当ててみたりと、独自のルーティンをつくっておくことで、スムーズに思考の切り替えができるようにしておくとよいでしょう。