誰もが親切でやさしくて、他人の立場を思いやり、助け合いながら仕事を進めていく……そんな天国のような職場はほとんどあり得ません。イヤミを言われたりムカつく言葉を投げかけられたりすることもあるでしょう。そうしたことに煩わされることは、時間の浪費です。うまくかわしたうえで、切り返すのが建設的です。どうしたらそれができるでしょうか。

孫正義さんの見事な切り返し

米国カリフォルニア大学バークレー校在学中に、日本の大手家電メーカーのシャープに自動翻訳機を売り込んで得た1億円を元手にして、起業家の仲間入りをした孫正義さん。いまでは、携帯電話や日本最大級のポータルサイトであるYahoo! JAPAN、そして投資ファンドなどの事業を幅広く展開するソフトバンクグループの会長兼社長を務め、「フォーブス」誌の「日本長者番付2023」で国内第3位となる2兆9400億円もの資産を持つ超お金持ちとして、誰もが知る存在になっています。

それだけに、妬んだり、やっかんだりする人がたまに出てくるようです。あるとき、孫さんの髪の毛が薄いことを揶揄する投稿がSNS上にアップされました。日頃、自分が気にしていることをからかわれると、「何だ、この野郎」と腹を立ててしまうのが普通の人だと思います。でも、孫さんは違いました。

「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」──。このように見事な切り返しの投稿をアップしたのです。

経営者としての自分が前進するスピードがあまりにも速すぎるがために、髪の毛が追いつかなくなってしまっただけなんだ、ということを主張したのです。同時に、イヤミをまったく感じさせない、秀逸な自己PRにもなっています。