脳を最大限に活用して、仕事の効率を上げるためには、脳の認知負荷をできるだけ減少させることが必要です。そのためにはどうしたらよいか。脳科学では、タスクをできるだけ「細分化」「見える化」させることを提唱しています。具体的に解説していきます。
認知負荷を下げる3要素「シンプル」「明快」「親近」
脳に対する認知負荷が低い課題(=情報)の特徴として、「シンプル」「明快」「親近」の3つの要素があります。一方、認知負荷が高い情報については、その逆を考えればいいわけで、「長大」「難解」「初見」になるでしょう。そうした認知負荷が高い情報が脳の中に入ってくると、第2話で紹介したワーキングメモリは、テーブルの上に乗っていた情報を片付けて、新たな対応をしなくてはいけません。そこで、もどかしさやイライラ感が生じてきます。
その認知負荷が高い情報の3つの特徴がもたらす共通した結果に、「見えない」があります。「話が長くて先が見えない」「話の内容が難解で、何が言いたいのか見えてこない」「初めて触れる内容の話で、どう対応したらいいのかすぐにわからない」──。それゆえ、認知負荷が余計にかかってきます。
そうした見えない部分の情報を取ったり理解したりしようとして、人間は無意識のうちに「行間を読む」という行為をしています。普段の打ち合わせの場で、相手の目線やちょっとした仕草から、相手がどんな気持ちでいるのかを、私たちは読み取ろうとしています。これが、行間を読むことの代表例です。
コロナ禍で多くの会社では、在宅勤務に移行して、オンライン会議が導入されました。複数人のメンバーが自分を見ているというだけでもそれまで体験してきた会議とは様子が違う感覚であったことに加えて、分割されたディスプレイ上に同時に現われると、そうした相手の目線や仕草がわかりづらくなります。「相手の真意がなかなか伝わってこない」「自分の言ったことが本当に理解されているのか不安だ」といった声があがった背景には、オンライン会議に不慣れであったことに加えて、行間を読むことが難しくなったことも影響していたのです。