仕事ができるビジネスパーソンでも、時には「やっかいだ」「面倒だ」とネガティブな感情が生じることがあります。そのメカニズムは、脳の「認知負荷理論」によって説明ができるのです。集中力が削がれる「認知負荷」を減らすには、どうしたらよいでしょうか。最新脳神経科学の観点から解説します。

「やっかいだ」と感じるのは認知負荷がかかるから

明日に控えた重要な商談に備えて、どう自社製品のアピールをしようか、最終的なプランを練っていたとします。そんなとき、部下から「顧客のB社からクレームが入りまして、どう対応したらいいのかわかりません」と相談を持ちかけられたとしたら――。上司のあなたの頭の中には、「忙しい最中に、何でやっかいな話を持ってきたんだ」「面倒だな。まず自分で解決策を考えてほしいよな」といったネガティブな思いが、浮かんでくるのではないでしょうか。

もしそうだとしても、そのことを非難するつもりではありません。脳科学の見地からすると、そう思ってしまうのは、むしろ自然なことなのですから。ふだん部下の声にしっかりと耳を傾けている上司であっても、時に「やっかいだ」「面倒だ」と感じてしまう理由は、オーストラリアの教育心理学者であるジョン・スウェラーが1980年代に提唱した「認知負荷理論」によって説明することができます。

「認知」とは、脳の中に入ってきた情報に、どういった意味があるのかを知ることです。脳の中に入ってくる情報は多種多様であり、認知するまでのプロセスで脳に掛かってくる「負荷」の性質も変わってきます。一方、人間が脳の中で一度に処理できる情報量には限界があって、そのことと認知における負荷との関係を解き明かしたものが、認知負荷理論です。