儲かる会社を見抜く決算書の読み方実践編。第9話では、貸借対照表の読み解き方を解説します。株主の持ち分である純資産を上回る事業価値を生み出す会社、下回る事業価値しか生み出せない会社……バランスシートにはそれが示されます。株主が投資したがる儲かる会社はどこでわかるのでしょうか。
儲かる会社のバランスシートに変える
年が明けてから株式市場は活況を呈し、日経平均株価がついに、2月22日、3万9098円と、1989年12月29日の大納会でつけた3万8915円87銭の史上最高値を更新しました。株価はさらに続伸し、さらに4万円を突破するのではという見方も強まっています。この株高の要因の一つにあげられているのが、東京証券取引所が2023年3月に上場企業に対して行なった、資本コストや株価を意識した経営の一環としてPBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正に向けた取り組みを要請したことです。
PBRが1倍を下回っているような会社は、一般的に投資家が期待している最低限のリターンを実現できていないため、「そんな事業を続けているよりも、資産を処分して解散したほうがいい」と市場で見なされている状態です。「上場失格」の烙印を押されているのと同じです。それにもかかわらず、日本の代表的な会社500社で構成される「東証株価指数(TOPIX)500」のうち、PBRが1倍を割り込んだ会社が22年7月時点で40%以上を占めていました。つまり、日本の株式市場そのもの存在価値が問われかねない状況だったのです。
そこで危機感を強めた東証は、上場企業に是正を求めたわけです。そして、日本経済新聞によると22年末にPBRが1倍割れだった会社のうち169社が1倍を回復し、資本コストを有効に活用した経営への転換が評価され、今回の株高につながった側面があります。そして、なぜこのような話をしたかというと、これが儲かる会社の貸借対照表(バランスシート)にどうやって変えていくかということと、深いつながりがあるからなのです。