誰でも知っている東京中央区・銀座、集客力も抜群の街。経済ニュースを頭に入れて、この銀座を歩くと、日本経済の今が解読できます。銀座の街並みの何を、どのように見れば、何がわかってくるのでしょうか。ここでは、それを説明します。

38年間連続路線価日本一をキープする「銀座5丁目 鳩居堂前」

 「銀座」という言葉を聞いたら、ほとんどの人が「ああ、あの銀座ね」と思いながら、右手に百貨店の銀座三越、中央通りを挟んで左手には高級専門店の和光が立ち、さらには世界の高級ブランド店が軒を連ね、その前を多くの人や車が往来する銀座4丁目交差点の光景を頭の中に浮かべるでしょう。

コロナ禍が明けて、海外からのインバウンドが戻ってきていますが、銀座は外せない観光スポットの一つになっているようで、今日も大勢の外国人観光客がショッピングを楽しんでいます。

その「銀座」の地名は、1603年に江戸幕府を開いた徳川家康が、駿河にあった銀貨の鋳造所を現在の銀座2丁目の場所に移し、「銀座役所」を設置したことに由来します。当時の正式な町名は「新両替町」だったそうですが、やがて通称として「銀座」と呼ばれるようになったのです。日本経済を支える要衝の地として、長い歴史を刻んできたことがわかりますね。

そして、毎年7月に銀座が注目されるニュースが流れます。それは国税庁が発表する、その年の1月1日時点での「路線価」です。路線価は、相続税や贈与税の算定基準となる土地の価格で、2023年の全国平均を見ると前年比1.5%増となり、コロナ禍の影響を脱して土地の売買が盛り返している様子がうかがえます。

その路線価が全国で最も高かったのが、東京中央区銀座5丁目のお香や書画用品、和紙製品、高級筆記具などの専門店「鳩居堂」の前で、なんと38年連続で最高の座をキープしました。では、実際の鳩居堂前の路線価がいくらだったかというと、1㎡当たり4,272万円だったというから驚きます。

ちなみに2位は大阪を代表する繁華街である御堂筋で、1,920万円でした。鳩居堂前は、その2倍以上で断トツです。ビジネスパーソンの生涯賃金は約2億円といわれますが、その全額をつぎ込んでもわずか4.68㎡の土地しか買えません。

まさに庶民にとって“高嶺の花”である鳩居堂前の路線価のニュースを耳にすると、いつも私が思うのは「どんな商売だったら、この場所で店舗を借りても成立するのだろうか」ということなのです。