ビジネスパーソンでも「会計思考」を持ち、常に商売人の思考を持つことで、仕事のパフォーマンスは上がり、人生は豊かになります。ではなぜ「会計思考」を持つ人は、仕事ができるといわれるのでしょうか――。

「会計」の語源は「会って功績を計る」

会計思考の人は、会計の本質的な機能を理解しています。その会計の機能を探るために歴史を遡っていくと、会計という言葉が世の中の書物に初めて登場したのは、中国の古典で司馬遷が著した『史記』だったといわれています。

これは、会計の歴史に造詣の深い公認会計士の吉田寛先生から教えていただいた逸話です。いまから4000年以上も前の中国では、黄河の大洪水を恐れて、人々は木の上での生活を余儀なくされていたそうです。そこで黄河の治水を命じられたこんが、9年の歳月をかけて堤防を築きます。

しかし、洪水の被害は一向に減らず、工事に携わった民の労役を無駄にした咎で、鯀は死刑になってしまいました。そして、その難工事を引き継いだのが、鯀の息子のだったのです。禹は13年かけて治水工事をやり遂げ、洪水に対する不安から解放された民は、田で米を作り、豊かな生活を送れるようになりました。

この禹の功績が『史記』に記されており、そこには「禹会諸侯江南計功」とあります。「禹は(一緒に治水工事をした)諸侯と江南で会って功績を計った」という意味で、これが「会計」の語源になっているそうです。さらに後漢に書かれた『越絶書』には、徳のある人には爵位を授け、功績があった人には土地を与えたとし、このことを「大会計」と記しています。

会計の始まりは、金勘定でもなく、単なる数字合わせでもない、人の能力を適切に評価して、適材適所を実現することだったのです。そう聞くとビジネスパーソンのみなさんは、会計という言葉に親近感が湧いてくるのではないでしょうか。

翻って現代では、株主総会で代表取締役社長をはじめ役員の信任を問う際の判断基準に用いられるものが財務諸表です。そこには会社の業務の成績が記されており、本来の会計の機能として、その役割を果たしていることがわかってきます。