上位1%よりさらに少数のトップセールスパーソンは、マナー本に書かれているような一般的なマナーを超えたレベルの立ち振る舞いを実践しています。そうした超一流の営業パーソンは、事前の完璧な準備によって、想定されるさまざまな事項をクリアにし、すべての興味関心をその場に同席しているお客様に向けているのです。

一流の営業はマナーを守る、超一流の営業はマナーを超える

一流の営業パーソンは、当然、マナーも完璧です。トップブランドのトップセールスの方や、営業力の高さで有名な就職エージェントのトップセールスの方にお会いする機会があるのですが、そういった方々は皆、たとえば会議や会食時の席次や、エレベーター内での立ち位置など、よくあるマナー本に書かれているようなことはすべて完璧に実行しています。あらゆる段取りが完璧であることに加えて、会話のなかでも空気を読んで、必要以上に自己主張をしなかったり、時には求められている発言をするなど、相手に不快な思いをさせることが一切ありません。

全営業パーソンの上位1%よりさらに少ない超一流の営業パーソンは、マナーを「超える」振る舞いをしています。マナーを超えるというのは、マナー違反をするという意味ではありません。マナーを理解したうえで、あえて相手の意表をついた発言や行動を取るのです。たとえば、相手が言うことに対して、ただただ「そうですね」と同意し続けるのではなく、「いや、でもこうじゃないですか」「こういうほうが面白くないですか?」とわざと相手の言葉に反することを伝えることで、「たしかにそうかも!」と場を盛り上げるのです。

この行動は、一流ではない人が見ると、「ああ、そんな感じにお客様に対して崩した態度でもいいのか」と勘違いするかもしれません。そんな人が、うっかりこのような態度を取ってしまうと「マナーを超える」のではなく、「マナーを破っている」ことにつながりかねません。

とても怖い話のが、ほんのたった一度マナーを破っただけで、これまで築いてきた信用や信頼を失ってしまい、大きく機会損失を出している経営者がたくさんいるということ。かくいう私自身もその失敗を何度もしてきました。かつて私は「マナーを破った」瞬間を、超一流の先輩がたまたま見ていたことで、運のいいことに「今のはマナー違反だ」と指摘され、以後気を付けることができるようになりました。それまでの私は、「自分がマナーを破っているはずない」と思っていたのですが、後々お付き合いのあった一流経営者の方たちに聞いてみると、「あ、気づいたんだ! よかったね。いや、このままだったら次からは田尻くんのことは呼ばないでおこうと思っていたんだよね」と思っていたそうです。自分のマナー違反に気づいて以降、信用・信頼回復にものすごい時間を必要としたのを覚えています。時には悔しくて涙を流したこともありました。

マナーを超えるには、前提としてお互いが不快にならないという空気ができたうえで、コミュニケーションを楽しむことが重要なのです。