一般的な営業パーソンはやっていないが、キーエンスの営業パーソンがやっていること——それが、お客様に対する「勇気づけ」です。勇気づけとは、お客様から「なんだか、この営業パーソンとつながっていると、自分のビジネスがうまくいく気がする!」と感じてもらえること。このようにお客様からポジティブな感情を抱かれるがゆえに、勇気づけができる営業パーソンはお客様が途切れないのです。では、どのようにすれば、「勇気づけ」ができるようになるのか。キーエンスで学んだ「勇気づけ」の技術を公開します。
「お客様のビジネスは、うまくいきますよ」と背中を押してあげる
キーエンスの営業パーソンはみな、お客様に対して必ず「勇気づけ」をしています。
超一流の営業パーソンの勇気づけは、会った瞬間からおいとまする最後の瞬間までを通して、「この人といると元気になる」「なんだか勇気が湧いてくる」とお客様に感じさせます。商談の最後には「なんか俺、できる気がする」と前向きな気持ちになるので、「これからもこの営業パーソンと一緒にビジネスをやっていきたい」とお客様から希望してもらえるのです。この勇気づけができる営業パーソンは、お客様が途切れないのです。
この勇気づけは、「お客様に元気を分けてさしあげる」といったような、営業パーソン自身が元気溌剌としていればいいというわけではありません。では、どうすればいいのかというと、まず大前提として、第5話でお話した以下の“5つの確信”を営業パーソン自身が持たなければいけません。
1「会社に対する確信(うちの会社はお客様にしっかりと貢献している)」
2「職業に対する確信(お客様に価値を伝えるセールスという仕事は素晴らしい)」
3「商品に対する確信(この商品は必ずお客様の役に立つ)」
4「自分に対する確信(自分はお客様に対して貢献するという心で動いている)」
5「顧客成功の確信(自分と契約すればお客様は必ず成功する)」
私の知るキーエンスの営業パーソンは皆、この“5つの確信”を意識して営業活動を行っていました。
そして、商談の最後にお客様が行う意思決定——つまり、「お客様のビジネスは、必ずうまくいきますよ」とクロージングに向けて背中を押してあげることが、勇気づけには大事なのです。
多くの営業パーソンは、お客様に意思決定してもらうことを、心のどこかで恐れてはいないでしょうか。もし、少しでもネガティブな感情を抱いているようならば、一度認識を改めてください。お客様に意思決定してもらうということは、非常に“プラス”な事象なのです。たとえ自社の商品を購入してもらえなかったとしても、お客様が意思決定をしたということはつまり、お客様が一歩進んだということ。営業パーソンとしては喜ぶべきで、“マイナス”に捉える必要はどこにもありません。
一番よくないのが、お客様が意思決定をしない時間が続くことです。買うのか買わないのか、最終結論を出さずに宙ぶらりんな状況が長引くのは、お客様にとっても、もちろん営業パーソンにとっても時間の無駄にほかなりません。