人は意義のあることをしている人や企業を、応援したいと思っています。ですから仕事や事業を成功させるためには、「なぜ自分はこの仕事をしているのか」を語り、共感を得ることが大切です。一流の営業パーソンとは、「なぜ」をわかりやすいストーリーで語ることができる人なのです。お客様が深い部分でCSR向上を求めていることを意識しましょう。

感動的な話を語らないと、CSRは価値を持たない

売れない営業パーソンは、お客様に初めて自社紹介を行うとき、「こういう事業をやっています」「こんなことで御社の役に立てます」という話をします。これでは、お客様に興味を持ってもらうことは難しいでしょう。

一方、一流の営業パーソンはお客様への提案の際に、自社のCSRを語ります。CSRコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)とは企業が社会に対して果たすべき責任、もっというと「なぜこの事業をやるか」というビジョンや意義です。CSRを語っていくと、お客様のビジネスと重なるところが必ず出てきます。たとえば、「地球温暖化防止」や「女性活躍」や「教育問題」などです。こちらのCSRと先方のCSRがバチッとはまったとき、こちらの提案がお客様により深く刺さり、成約率を高めることにもつながります。

CSRをお客様に語るうえで、皆さんにお伝えしたいのは、日本人は基本的に「美徳」を求めているということ。注意しなければいけないのは、CSRを語るうえでは、それを感動的に語らない限り、価値を持たないということです。よく、多くの企業がCSRにSDGsを掲げがちですが、突然「SDGsに貢献したいと思っています」とお客様に伝えても刺さりません。それは多くの人にとって、SDGsは自分の日常から遠い話だからです。

それをお客様に刺さる話にするためには、映画レベルでわかりやすくストーリーを語り、お客様が、「ああ、そうか。SDGsなんて自分とは関係ないと思っていたけど、放置しているとそんな大変なことが起こるんだ」とハッとするぐらい、お客様にとって身近な出来事と感じさせる必要があります。お客様は「隣の国の戦争より、自分のニキビのほうが気になる」ものなのです。

ですから、有名コンサルタントのサイモン・シネックが、著書『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』(栗木さつき訳・日本経済新聞出版)で語っているように、まずは「何のためにやっているのか」「なぜこの事業をやるのか」を、きちんと明確にする。「社会にはこのような問題があって、それを解決するために僕はこの仕事をやっているんです」と自分の言葉で言えれば、その瞬間に、「この人すごいな」と、お客様の見る目も変わってくるはずです。

さらに、その「なぜ」を狭めていき、最終的に目の前の人に刺さるようにストーリーをつなげ、あなたの会社のCSRがお客様にとっても“自分事”に感じられるようにする必要があります。周りから応援される人たちはみな、そうやって「なぜ」を語っているものです。