コロナ禍で感染対策として生み出されたサイゼリヤのオリジナル食事用マスク「しゃべれるくん」。お客さまのつけているマスクに紙ナフキンをはさむだけという、まさかのアイデアとその見た目はSNS上で話題を呼び、使い方を説明した動画は再生回数30万回を記録した。開発にあたって、着目したのは「ファンクション(機能)」。その機能分析の手法をご紹介します。

紙ナフキン1枚でつくることができる、オリジナルの飲食用マスク

コロナ禍で、飲食業界は苦境にたたされました。

営業時間の短縮要請や外出自粛のムードの影響で、潰れてしまった飲食店も少なくありません。私はといえば、緊急事態宣言の再発令決定を受けて、決算会見でつい口にした「ふざけんなよ」発言で、世間を賑わせることとなりました。

政府の言うことにただ従っているだけでは、飲食業界は衰退してしまう。当時はそうした危機感から、感染対策をしっかりとしながらお店を営業する糸口はないかを、ずっと考えていました。

コロナとはけっきょく何なのか、なぜ飲食をすると感染のリスクが高まるのか、何をすれば感染を防ぐことができるのか。

突き詰めて考えていくと、感染のボトルネックは「口」だということがわかります。

当たり前といえば当たり前のことですが、口からの飛沫さえ何とかできれば感染は防げます。口というポイントだけ押さえれば、コロナは広がらないわけです。そこで開発したのが食事用マスク「しゃべれるくん」でした。

「しゃべれるくん」はサイゼリヤが考えたオリジナルの飲食用マスクです。

お客さま一人ひとりに専用のマスクを配布するのは、かかる費用を考えると現実的ではありません。しかし、「しゃべれるくん」であれば、お客さまがしているマスクを活用して、紙ナフキン1枚でつくることができますし、その場でつくって、使い終わったらすぐに捨てられるので衛生的です。

そればかりではありません。飲食店での感染リスクが高いとされていたのは、マスクを外すからです。この「しゃべれるくん」を使えばマスクを外さずに飲んだり食べたりすることができます。

さっそく、つくり方や使い方を解説する動画をつくって公開したところ、再生数が30万を超えるという大きな反響があり、ネットニュースなどでも紹介されました。