商品やサービスを開発するには、まず自社のマーケットにおける「ポジショニング」を確認する必要があります。自社の商品の特徴は何か、競合他社と比べたときの強みは何か。そこで役立つのが、縦軸と横軸のマトリクスで自社と競合他社の位置関係を示すポジショニングマップです。サイゼリヤの人気のパスタメニューを実例に、ポジショニングマップを使った商品戦略について考えてみます。

サイゼリヤのカルボナーラは、なぜ熱々ではなく、ぬるいのか

カルボナーラは、もともとローマのパスタです。日本では濃厚な生クリームを使用してクリーミーな印象が強いカルボナーラですが、本場で生クリームは使いません。入っているのは卵とペコリーノチーズのみ。

サイゼリヤのカルボナーラは、この本場ローマのカルボナーラを完全に再現していて、生クリームを使っていません。

生クリームを使わないことでの「誤解」もあります。卵は熱によって固まりやすく、生クリームを入れないとダマになってしまいます。熱を加えすぎるとすぐにダマになるので、生クリームを使用しないカルボナーラは必然的にぬるくなります。

日本人は熱々のパスタを好む傾向にありますが、イタリア人は熱いパスタを食べる習慣がありません。ですから本場のパスタとしては、じつは、ぬるいのが正解なのです。

お客さまの中には、「出来立ての熱々パスタが食べたい」とおっしゃる方も、少なからずいらっしゃいます。しかし、サイゼリヤでは、あえて日本人の好みに合わせることをせず、本場イタリアのスタイルを貫いています。これは、じつはサイゼリヤの商品の独自性を高めようという商品戦略でもあるのです。

商品を開発するには、まず自社の「ポジショニング」を確認する必要があります。

市場において、自社の商品やサービスがどう認識されるべきなのか。さらに、自分たちの商品やサービスの特徴は何なのか、他社より優位なのはどこなのか。ポジションを決められなければ、戦うべき相手も、進むべき方向性もわかりません。

今回はサイゼリヤのパスタのポジショニングについて考えてみたいと思います。