ビジネススクールの教科書で紹介される有名な戦略のひとつに「ブルーオーシャン戦略」があります。そのブルーオーシャン戦略をとるための手法のひとつが「戦略キャンバス」ですが、これについてきちんと説明できるビジネスパーソンは案外少ないのではないでしょうか。狙うのは、低コスト化と競合他社との差別化の両立です。サイゼリヤで挑戦したクイックパスタの新業態の事例を交え、ご紹介しましょう。

レッドオーシャンを抜けだし、ブルーオーシャンを切り拓く

「ブルーオーシャン戦略」については、耳にしたことがあるでしょう。競争の激しい既存市場、つまりレッドオーシャン(赤い海)を抜け出し、理想的な未開拓市場であるブルーオーシャン(青い海)を切り拓くべきとする経営戦略論です。

事業において、その市場が「ブルーオーシャン(未開拓な市場)」であることは重要です。既存の成熟した市場でビジネスをしていても、売り上げは伸びづらいからです。

その際、不要な機能をそぎ落とすことによる低コスト化と、顧客に提供する価値を高めることによる差別化の両立は可能であるとするのが、ブルーオーシャン戦略の最大の特徴です。

今回はブルーオーシャン戦略をとるための手法のひとつ、「戦略キャンバス」についてお話ししましょう。戦略キャンバスとは、業界における競争の因子を並べて、消費者にとっての価値の高さを明らかにしたチャートのことです(図6-1)。

チャートで表された線は「価値曲線」と呼ばれます。横軸には競争の要因、縦軸には消費者がどの程度の価値レベルを享受しているかのスコアをとります。スコアが高いほど、企業がその因子に力を入れていることを意味します。

この戦略をとる場合、まずチャートに示された因子のうち、どの因子に力を入れるかを決めます。

このとき、自社が力を入れる因子を決めるだけでなく、他社が力を入れている因子に力を入れないという判断をすることも重要です。捨てるべきところは捨て切ることで、選択すべきところに集中することができ、結果として他社との差別化が可能になります。