飲食店というのは、既存のお客さまが新しいお客さまを連れてきて、店の使い方を教えてくれるところがあります。千葉県で個人経営のイタリア料理レストランとしてスタートしたサイゼリヤ。いまでも千葉の店舗には、ワインを飲む店としてのDNAが残っています。一方で、大阪の店舗は千葉とは違う顔を見せます。今回は、エリアごとの傾向を一目で把握するだけでなく、より広い視野で物事を捉えるためのフレームワークとして、「レーダーチャート」の使い方をご紹介しましょう。

千葉のサイゼリヤは、ワインを楽しむ“おとなのレストラン”

サイゼリヤ発祥の地は千葉です。千葉県市川市に1号店をオープンしたのが1973年。1980年代のバブル期、イタリア料理は「イタめし」と呼ばれて一大ブームとなり、本格的なイタリアンレストランが、そこかしこに登場しました。

その頃はワインブームの時期でもありました。1号店は、最初は個人店だったので、お客さまと従業員の距離が近く、「このワインだとこの料理がおすすめですよ」というようにお客さまと直接コミュニケーションを取って、ワインを中心とする接客をしていました。

「カスタマー・インティマシー」というのですが、こうした顧客親密性が非常に高い接客が、サイゼリヤに訪れるお客さまをワイン好きに育てていきました。1号店をはじめ、千葉エリアのサイゼリヤは、ワインとイタリアンを楽しむ“おとなのレストラン”として地域の人たちに認識されていたのです。

それから50年ほど経ちましたが、いまでも千葉エリアのサイゼリヤにはワインを飲む人たちが集まる傾向が見られます。傾向を図にして、パターン化してみたいと思います。レーダーチャートを使って、見てみましょう。

レーダーチャートとは多角形のグラフで、中心をゼロとして放射状に線をひき、それぞれの線上に数値軸を記した図です。各項目の値を線で結んで多角形をつくり、その形状を見ることでパターンを把握することができます。

千葉のレーダーチャートでは、サラダ、ワインのほか、肉料理、デザートの売り上げが目立ちます(図5-1)。

キッズプレートやパスタはあまり出ません。明らかに、子どもよりも“飲んべえ”が集まっていますが、これは創業時からの“おとなのレストラン”としてのイメージが、いまだに浸透しているからでしょう。

飲食店というのは、既存のお客さまが新しいお客さまを連れてきて、店の使い方を教えてくれるところがあるので、ワインを楽しむお店として使ってくれている人が多い店では、そのDNAが残り続けていくのです。