時代の流れを見極めるためには、感度の優れた「イノベーター」の存在が欠かせません。消費者を価値観や消費行動によって、イノベーターをはじめとする5つの型に分類し、市場に商品やサービスが浸透していく流れを分析した「イノベーター理論」は、商品戦略を考えるうえでの重要なフレームワーク。マニアックな料理にもかかわらず、サイゼリヤで販売中止するほどの人気となったラムの串焼き「アロスティチーニ」の裏側にも、じつはイノベーターの存在があります。

「ラムの串焼き」の生産が追いつかず、販売休止に

サイゼリヤに「アロスティチーニ」というラムの串焼きがあるのをご存じでしょうか。

イタリアのアブルッツォ州の伝統的な料理です。日本ではメジャーな食べ物ではないですが、サイゼリヤでは一時は生産が追いつかず販売休止したほどの、人気商品となっています。

私は毎年必ずイタリアを視察で訪れ、アロスティチーニのような、日本人がまだ知らないイタリアの料理や食材を見つけては、メニューに取り入れるということをしていました。それはなぜか。今回は、サイゼリヤの「商品戦略」についてお話ししましょう。

商品戦略を考えるには、まず自社で行っている事業の位置づけを確認する必要があります。商品や事業には、導入期、成長期、成熟期を経て、やがて衰退期に入るというライフサイクルがあります(図4-1)。

サイゼリヤがどこに位置しているかといえば、成熟期の前半。この位置で狙うべきなのは、市場規模における緩やかな成長です。