AIの存在が、急速に身近なものになってきました。それとともに、近い将来さまざまな職業において、AIに仕事を奪われてしまうのではという懸念が語られています。ところが柴山氏は、「実は、会計業務にとっては、AI時代は非常においしい」と語ります。それは、いったいなぜなのでしょうか。

公認会計士や税理士はAI時代に価値が上がる

2022年11月に対話型AI(人工知能)サービスである「ChatGPT」が登場しました。人間のように自然な会話ができるうえに、文章の生成や編集ができるとあって、リリースからわずか5日後にはユーザー数が100万人を突破し、その後も世界中でユーザーが増えています。

AIという言葉をメディアで頻繁に見聞きするようになったのは、それから遡ること7年前の15年あたりからでした。その年の12月に野村総合研究所が、英国オックスフォード大学のマイケル A.オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究に基づいた、1本のレポートを発表して大きな話題になったのです。

それは「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に ~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」というタイトルのレポートで、大勢の人が「自分の仕事がなくなるのでは」と危機感を募らせたのです。代替可能性の高い職業のなかに「経理事務員」が含まれていたものの、私が資格を持っている「公認会計士」「税理士」は含まれていませんでした。かといって、代替可能性が低い100種の職業のなかにも含まれていません。気になるところではありますが、私は公認会計士や税理士という職業は本格的なAI時代が到来してもすぐどうこうなるということはなく、しばらくの間は安泰であるし、むしろこの職業の価値がアップしていくものと考えています。

その理由の一つは、日本国憲法第30条によって「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と定められている点です。ここでいう納税の義務には、会社も含まれます。つまり、会社は年に1回必ず所管の税務署で確定申告を行なわなくてはなりません。その確定申告に際してのアドバイスができるのは税理士だけなのです。ちなみに公認会計士にも上場企業等の監査業務に関する法律の規定などがあるのですが、加えて税理士登録ができるので、ここでは一体のものと考えてお話ししていきます。