Part3では、「会計思考」によって3年後、5年後といった長期的な目で経済を見る方法を解説していきます。まず今回は、景気の先行きを判断するためには、何に注目すればよいのかを考えていきましょう。

日本人の懐は本当にお寒いのか指標で見る

そもそもその国の経済は、「一人ひとりの消費者がモノを買ったり、サービスの提供を受けたりしたいという意欲を高めて、それを実行に移す」という状況が、企業の供給能力以上に活発化しなければ、うまく回っていきません。日本におけるバブル経済崩壊以降の「失われた30年」と呼ばれた期間は、そうした消費者のモノやサービスに対する購買意欲が、企業の供給能力を極端に下回るようになって、深刻なデフレ不況に陥っていたのです。

とはいえ消費者だって先立つもの、つまりお金がなければ、モノを買うことも、有償のサービスを受けることもできません。日本人の懐は本当にお寒い状況なのでしょうか?

日本銀行が四半期毎に発表している「資金循環統計」には「個人金融資産残高」が示されています。直近2023年12月に発表された第3四半期(9月末時点)における個人金融資産残高が2121兆円で、過去最高だった6月末の水準を小幅に上回り、4四半期連続で過去最高を更新しました。日本の人口が1億2000万人だとして、単純にその平均値を求めると、日本人は一人当たり1767万5000円の金融資産を持っている計算になります。

もちろん「自分を含めて家族全員の分を合わせても、そんな額にはならない」という声が、大勢の人からあがってくるであろうことは承知しています。金融資産は偏在していて、高齢者になるほど高額な金融資産を持つ割合が大きくなります。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯調査)22年」によると、70歳代では2000万円~3000万円未満が12.3%、3000万円以上が22.5%を占めています。その一方で、働き盛りの40歳代だと、最も割合が大きいのが、なんと15.1%の100万円未満なのです。

ここで私が言いたいのは、とにもかくにも、トータルで見た日本の「個人=消費者」は、本来使えるお金を潤沢に持っているということなのです。