「やらないといけない」とはわかっていても、仕事が手につかない。あるいは、後回しにしてしまう。そんな部下の「先延ばし」には、タイプ別それぞれの原因があります。童話マトリックスのタイプ別診断を活用し、部下の特性に起因する原因を解明していきましょう。前回の「うさアリ」「うさギリス」に続き、今回は「かめアリ」「かめギリス」の先延ばし撃退法を解説していきます。
「かめアリ」の先延ばし撃退法
理由① 目的・ゴールが曖昧な仕事や、短納期の仕事は計画が立てられない
「うさアリ」と同様に、アリ系タイプの「かめアリ」は、仕事に対して「失敗したくない」「仕事を片づけて安心したい」という、リスク回避がモチベーションの源泉となっています。ですから、目的、目標、プロセスが明瞭でないと不安を覚え、着手できなくなります。
ただし、「うさアリ」が「やることが見えないと、すぐ取り掛かれなくて困る」のに対し、「かめアリ」は「やることが見えないと、計画が立てられなくて困る」という考え方です。計画を立てるために、「いまわかる情報は全部ほしい」と考えている、いわば完璧主義者なのです。
「うさアリ」のように焦ってはいませんから、「先延ばし」をするわけではなく、曖昧な点については納得するまで深く質問をしてくれます。納期は守り、クオリティの高い仕事をしますから、リーダーとしては最初から与えられる情報は提供し、ストレスや引っ掛かりのないよう依頼するべきでしょう。
そうはいっても、状況がそれを許さないことは多々あります。短納期ですぐに取り掛かってほしい仕事や、詳細が見えなくても走りはじめないといけない仕事もあるでしょう。そうした仕事にもスピーディーに対応できるよう、
・全体像や大枠が見えたら、動きながら詳細を考える
そのような取り掛かり方に慣れていくことが、「かめアリ」の成長につながります。1on1ミーティングを通じて自分の課題を理解してもらい、柔軟な取り組み方にチャレンジしていくよう導いてください。
理由② ルーティンワークで忙しく、リスクのある変化を嫌う
「かめアリ」は、短納期の仕事の依頼に対しては、はっきりと「その仕事はお受けできません」と断る場合があります。「うさアリ」同様、「仕事はやるべきもの」と考えているので、面倒くさがっているわけではありませんし、責任感も強いので残業などを嫌がるというわけでもありません。
完璧な計画を立てているがゆえに、「キャパオーバー」、あるいは「自分では間に合わせられない」「クオリティを担保できない」と冷静に考えて判断しています。しかし、「かめアリ」は自己主張や自己表現をあまりしないので、つっけんどんな伝え方になり、「ただ嫌がっている」と捉えられてしまうことが多いのです。明確な理由があるので、「部分的に対応することは可能か?」「納期を延ばしたらできるか?」など、譲歩して依頼すると前向きに検討してくれるはずです。
しかし、「かめアリ」が新しい仕事を受けられないほど忙しい場合には、注意が必要。「かめアリ」は完璧主義であるがゆえに、例えば「業務のチェック回数が多すぎる」など、プロセスに無駄を抱えている傾向にあります。
「かめアリ」からすれば、「失敗」というリスクを回避するためにプロセスを固めているため、単に「無駄が多い」と言われれば反発しますし、そもそも変化に対して保守的な傾向があります。新しい方法による改善効果よりも、慣れないことで失敗するリスクを恐れてしまうのです。
そうした「かめアリ」の心情を理解したうえで、「完璧主義」から「最善主義」への移行を促すことがマネージャーの務めです。100点満点の完璧さに時間やコストをかけるより、80点でいいからスピードを重視して対応量を増やすなど、意識変容を促していきましょう。小さなことから成功体験を積み、「かめアリ」の不安感に配慮しながら改善を広げていくのです。