製造業が国内GDPの牽引役だった時代は過ぎ、日本の労働生産性の大きなウエイトを占めるのがサービス産業です。しかし、2000年代からその資本装備率が停滞、今や日本のサービス業の労働生産性はアメリカの半分以下となってしまいました。宮本教授は「価格競争」に転じたツケが今きていると言います――。

サービスセクターの生産性が日本全体に影響する

GDPが上がらない、物価も、賃金も上がらない。そんな日本になった原因のひとつに、労働生産性の低迷があります。日本の労働生産性は、先進国に比べて非常に低いことは、第2話でも触れました。

製造業の生産性はそれなりに推移してきたと言われています。大きな問題になるのが、サービスセクターの労働生産性なのです。

かつての日本では製造業がGDPを牽引していましたが、経済のサービス化は欧米先進国でも日本でも同じように起こり、経済構造は大きく変化しました。現在の日本では、サービスセクターのGDPに占める割合は7割を超えています。

一般にサービス産業は、情報通信業、運輸業、郵便業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育・学習支援業、医療、福祉、その他、これらに分類されないサービス業のことを指します。

労働生産性を測る指標のひとつに、資本装備率があります。従業員1人当たりが生産活動を行うのに利用する設備の多い・少ないを表す資本装備率ですが、単純に言うと従業員1人にどれくらいの機械設備を与えているかということです。

この資本装備率は製造業では右肩上がりで上昇してきましたし、今も上がっています。一方で、サービスセクターでは2000年代に入る頃から資本装備率が停滞し、経済全体としても2000年代には伸びが止まり、フラットになった。経済全体に占めるサービスセクターのシェアが増えているために経済全体の資本装備率がフラットになったのです。これが、日本で労働生産性が上がらなくなった理由のひとつだと思われます。