お客様のことをわかったつもりの営業パーソンは二流である——。これは第3話でもお話ししましたが、なぜ「わかったつもり」がだめなのかというと、お客様のニーズにはそれぞれ優先順位があるからです。「わかった」と思った瞬間、ニーズの探求が止まってしまう。それによりスランプに陥る営業パーソンが大勢います。スランプに陥らない、あるいはスランプから脱出する秘訣を教えます。
急に売れなくなった! スランプの原因は「わかったつもり」
「今まで順調に営業成績を上げられていたのに、なぜか急に売れなくなってしまった」
「以前と同じ提案をしているのに、最近はお客様のリアクションが悪い」
「お客様のニーズがわからなくなってしまった……」
これは、多くの営業パーソンが陥るスランプです。この前までは好調だったはずなのに、突然成果を上げられなくなってしまう原因は、あなたがお客様のことを「わかったつもり」になっているからです。第3話でもお話ししましたが、お客様のニーズの探究に終わりはありません。そこそこの成果を上げた営業パーソンは、ついお客様のことを「わかったつもり」になり、ニーズを探ることを怠ってしまいます。一流は、「一生懸命調べてきたので、わかっていることもあります。だけど、わからないこともあるので教えてください」という姿勢を常に貫き、次々湧いて出てくるニーズを取りこぼさないように、キャッチしつづけます。
そもそも、お客様のニーズについては、「①明確に」「②完全に」「③認識のズレなく」理解しておくことが重要です。
1「明確に理解する」とは、お客様のニーズ一つひとつに関して、「具体的に何かわかっている」「なぜそれが必要かわかっている」こと。
2「完全に理解する」とは、お客様の「すべてのニーズがわかっている」「それらの優先順位がわかっている」こと。
3「認識のズレなく理解する」とは、お客様がイメージしているニーズの絵と「まったく同じ絵を描ける」こと。
この3点をきちんとおさえるためには、前回の第7話でお話ししたように、実際に商品が使われるであろう現場に足を運ぶなどして、お客様と同じ光景を見たり体験したりするのが効果的です。
実際に、これら3点を完璧に達成することは並大抵ではありません。たとえ達成できたとしても、ニーズはお客様の状況や世の中の流れによって変わり続けます。私の体験では、それが1日で変わってしまうことも多々あります。それを理解せず、一度「わかった」と思われるお客様のニーズに固執すれば、それ以降のニーズの変化を見落とし、どんどん受注ができなくなっていきます。「僕、営業活動のことわかっています」「マーケティングなら完全に理解できています」「クライアントのことをすべて知っています」と思い上がった営業パーソンは、そこで情報の収集が完全に停止するのです。それがわからない営業パーソンは、二流というしかありません。