営業が気をつけなければいけないのが、自分たちとお客様との「認識のズレ」です。先方の担当者が、「いいですね、これ」と言っていたというぐらいの段階では、まだまだ受注は先の話。そもそも、お客様のニーズの「認識のズレ」があったというケースでは、どれだけ提案をしたところで商品を購入してもらえないのも当然のこと。どうすれば「認識のズレ」を防げるのか? 私がキーエンスから学ばせていただいた「認識のズレ」防止法を教えます。

あなたが受注を取れない理由は「認識のズレ」である

担当者の感触もいいし、これは受注が取れそうだと自信があったのに、なぜかなかなか契約に結び付かない……こういったことに、身に覚えはありませんか? あるいは、自分の部下が「担当者が『いい商品だ』と話していたので、受注いただけると思います」と言っていたのに、結局は受注に至らなかった、なんて経験がある人も多いのではないでしょうか。これは、すべて、営業パーソンとお客様の間に、「認識のズレ」が生じているからです。

このズレは、「受注確度」における認識が違っているケースと、「ニーズ」における認識が異なっているケースがあります。

前者のズレを見つけるポイントは、「お客様の誰が言ったのか」「お客様の何を言ったのか」を明確にすることです。

「受注確度」における認識のズレが起きてしまう原因は、「いい商品だ」と発言した商談相手の役回りを営業側が理解できていないからです。商談相手が経営者の場合は、本人が決裁者であるので、「いいね」ということはつまり、商品を購入する気があるということです。

対して、商談相手が窓口担当者だった場合、「これいけますよ」「売れると思います」と言われても、それで実際契約してもらえる可能性はせいぜい20%ほどしかありません。一般的なBtoBの営業では、顧客企業の担当者はほぼ、上申して上司の決裁をもらわなければいけない立場です。初回の説明で担当者が「この機能はいいと思った」と言っていたとしても、その段階ではまだ決裁権を持つ上の人には、話が届いていないはずです。担当者が「いいね」と言ったからといって、決裁が下りるということはありません。

担当者と決裁者とでは、営業パーソンからの提案に対する着眼ポイントが違います。決裁権を持つ人は、価値で購入の可否を判断します。提案に対して、生産性、財務、CSR、コスト、リスク、付加価値といった、それぞれのニーズにおける「価値」がどの程度かを考え、「これは買うだけの価値がある」と見極めなければ、OKは出しません。しかし、相手が窓口担当者の場合は、お客様にとって価値は一体何なのかをこちらが示し、決裁者にも届くように数字として提案しなければならないのです。