いびき同様、睡眠中に無意識に起こる歯ぎしり。そして、寝ている間だけでなく、起きているときにも無意識に起きる食いしばり。危険なそれらの症状と改善法を、顎関節治療の権威が解説してくれる。

頭痛、肩こり、歯周病、顎関節症の原因に

歯ぎしりや食いしばりも、睡眠の質を低下させる大きな要因の一つだ。元東京医科歯科大学顎関節治療部長で、木野顎関節研究所所長で歯科医師の木野孔司氏によると、歯ぎしりや食いしばりには大きく4つの悪影響があるという。

1点目は、歯を痛めてしまうことだ。夜間の無意識の歯ぎしりや食いしばりは、昼間に意識的に行う食いしばりの何倍もの力がかかる。このため、歯が折れてしまうこともあるという。2点目は、筋肉を使い続けるため頭痛や肩こりを引き起こすこと。3点目は、歯周病の悪化だ。強い力で噛みしめて歯に力を加えるため、歯周組織を破壊してしまう。「歯周病の最大の悪化要因は、夜中の歯ぎしりや食いしばりだと言われている」と木野氏は指摘する。4点目は、関節や筋肉を傷めるため、口を開けたりものを噛んだりすると痛みが出たりするなどの顎関節症につながることだ。

歯ぎしりや噛みしめは、誰にでも起こる。木野氏は「来院者を見ると、女性のほうが歯ぎしりの訴えは多いが、海外の調査結果などから見ると、おそらく男女差はないだろう。女性のほうが健康意識が高い傾向にあるためではないか」と話す。