寝ている間、知らないうちに起こるいびきや睡眠時無呼吸症。しかし、放置していると取り返しのつかない深刻な事態になることも。その危険性と改善法を、2人の医師が解説してくれた。それは――。

狭心症、脳梗塞、頻尿……最悪の場合は「死」も

いびきは、本人に自覚症状がないことが多いうえに、家族に指摘されても「いびきなんてみんなかいているから」と、深刻にとらえない人が多い。しかし、東京医科歯科大学の教授で同大学快眠センター長の宮崎泰成氏は、「ありふれているからと放置する人が多いが、QOL(生活の質)や仕事のパフォーマンスに影響するばかりか、深刻な病気が隠れている可能性が高い。とにかく早めに病院に行ってほしい」と強調する。

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あおむけで寝ると、舌根が沈下し、軟口蓋、下顎は背側へ後退する。それにより気道が狭くなったり塞がったりすることで、いびきや無呼吸を引き起こす。横向きで寝ると軽減できる可能性がある。

では、どのくらいの人が実際にいびきをかいているのだろうか。慶友銀座クリニック院長で耳鼻咽喉科専門医の大場俊彦氏は「日本では男性の20%、女性の10%が習慣的にいびきをかくと言われている」と話す。

いびきは、寝ている間に何らかの理由で、鼻からのどへの空気の通り道(気道)が狭くなり、音が出る現象だ。疲れていたり、寝る前に飲酒をしたときなどにかくこともあるが、こうした一時的ないびきは問題ない。しかし、恒常的なら検査や治療が必要だ。

いびきの音が出る部分がどこか、つまり、気道が狭くなっている場所や原因によって、治療方法は異なるが、これは検査してみないとわからない。宮崎氏は「まずは快眠センター、スリープクリニック、睡眠時無呼吸症外来、いびき外来などの専門外来を探してみるとよい。睡眠やいびき、睡眠時無呼吸症を専門とする医師に診てもらうことがお勧めだ」と話す。そこでは、まずどこが詰まっているか(閉塞しているか)を見つけて、睡眠状態を脳波も含めて精査していくが、内科や呼吸科などのほか、鼻詰まりが原因であれば耳鼻咽喉科、歯並びや顎の形状が原因の場合は歯科などとも連携して治療が行われる。

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一方、子どものいびきは、鼻詰まりや、鼻とのどの間にあるアデノイドという部分が大きかったりすることが原因であることが多いので、まずは耳鼻咽喉科に行くとよい。「いびきのせいで熟睡できておらず、授業中に眠くなって集中できなかったり、イライラしたりするなど、学校生活がうまくいかない子どももいる」(宮崎氏)ため、気になる場合は早めに診てもらおう。

いびきの音が出る場所には大きく分けて、鼻とのどがある。

鼻から音が出るいびきは、鼻詰まりが原因であることが大半なので、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの治療をすると、治ることが多い。大場氏は「鼻詰まりの治療が、いびき治療の最初のステップ。空気はまず鼻から通るため、鼻詰まりがある場合は、まず鼻詰まりを治療してから、のどのいびきの治療を行う」と話す。

のどから音が出るいびきの多くは、あおむけで寝ている間に舌が奥に落ちて、気道が狭まることで起きる。その場合は、ひどくなると、気道が狭まるどころか完全に塞がり、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症を引き起こす。睡眠時無呼吸を伴わない単純性いびきであっても、放っておくと睡眠時無呼吸症に進行する可能性がある。大場氏は「30代以上でパートナーから大きないびきを指摘された方は、まず睡眠時無呼吸症かその予備軍」と話す。