不確実性にあふれる時代のなか、唯一確実なものである「欲求」を追求することがリーダーの成功につながる、と高原さんは言います。

(2021年11月8日レター)

世の中、“不確実性”にあふれています。新型コロナウイルスの世界的パンデミックは突如として訪れ、全世界の働き方やビジネスモデルを変えていきました。予測できない事象について考えても仕方ありません。それよりはこの時代において唯一確実なもの、人間の「欲求」を拠りどころにビジネスを進めるべきです。

欲求は人間の根本的なもので、外的要因で失われるものではありません。ユニ・チャームの商品は顧客「欲求」に応えることによって世界中で購入され、社内教育でも個の「欲求」を軸に成長を促すシステムになっています。人間は「欲求」によって動かされます。

私は2001年に社長に就任して以来、毎年末に「次の一年を表す漢字」を発表しており、2021年は“杭(くい)”を選びました。杭とは、「出る杭は打たれる」の杭、つまり目立つほどすぐれた個性という意味で、簡単に言えば「強み」です。多様な価値観にあふれたニューノーマルな社会においては、一糸乱れず統制のとれた行動ではなく、個によるイノベーションこそが道を切り拓いていくと考え、個の強みをもっと発揮していこうというメッセージを発信しました。

あなたは、自分の「杭」を見つけられているのでしょうか。自分の「杭」を知るには、「自分の欲求=なにがしたいのか、なにが好きなのか」を見つめ直すことからはじまります。もともと自覚していたり、他人から指摘されて気づいたり、環境の変化によって自他ともに知らなかった「好きなこと」を発見することもあります。

これらの「好きなこと」を基軸に、自分の正しい「杭」が初めて見極められるのです。たとえば「戦略を練るのが好きで最善の一手を打てる」「知識が豊富で生き字引のような存在である」といったように自覚し、ビジネスシーンでその能力を遺憾なく発揮できるようになります。ユニ・チャームでは、全社員に「あなたの『杭』はなんですか?」を書き出しチーム内で共有してもらうことにしています。

リーダーたるもの、「杭」を伸ばし続けていかなければいけません。「会社の業績を上げるため」とか、「周囲の要求に応えるため」という表面的な理由ではモチベーションが続かないでしょう。リーダーは何のために杭を伸ばすのか。「自分のなりたい姿」になるためです。杭を伸ばしていく過程では、必然的に専門性や実績が上がり、付随して自らの立ち振る舞いが「なりたい姿」に近づいていくはずです。結果として強力なリーダーシップにもつながっていきます。

吉田松陰が「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」という名言を残しています。この「夢」は、「欲求=なりたい姿」と読み替えてもいいのかもしれません。欲求があるからこそ、人は成功にたどり着くことができます。(つづく)

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