「社員を大切にする」とは、どういうことでしょうか。給料を上げる、賞与を増やす、休みを与える、表彰する。横田さんは、そのいずれでもないと言います。(2021年1月4日レター)
ネッツトヨタ南国(創業時の社名はトヨタビスタ高知)は1980年に高知で創業して40年になります。トヨタ系ディーラーのお客様満足度では12年連続してナンバーワンとなったほか、総合表彰も14年連続して受賞するなどして、安定経営が続いています。
これを支えてきたのが、「社員の幸せを第一に考える」経営です。ここ10年余りの離職率は1%程度で推移しており、会社に不満を抱いて辞める社員はほとんどいません。うつなどメンタルヘルスが原因で休んでいる社員はゼロです。
「社員の幸せを第一に考えている」というと、給料がよく、休みが多い、福利厚生などが充実し、それに喜びを感じて社員がいきいきと働いている会社。こういうイメージを抱かれることがあるのですが、ネッツトヨタ南国の実態とは少し違うところがあります。
社員が望むものには、「満足」要因と「幸せ」要因とがあり、私はこれを次のように分けて定義しています。給料、賞与、休暇の多さ、さらには昇進、昇格、報奨金、表彰などは、すべて目に見えるもので、「満足」要因です。これに対して、働きがいがある、休み明けに出社するのが楽しい、といった目に見えない、働いているその時に感じるもの、これが「幸せ」要因です。自分の成長が実感できる、自分の努力が評価される、職場の人間関係がよい、チームワークがよいなども「幸せ」要因に入ります。
いま、働く動機を高めるために行われているのは、上意下達、指示命令、ホウレンソウ、叱咤激励、信賞必罰、ノルマなどが大半でしょう。マニュアル、まねをさせるといった、本人が自主的に考えなくとも仕事ができる仕組みも取り入れられています。これらはすべて「外側からの動機づけ」です。
人は目に見えるもの、賞与、報奨金、昇進、昇給など「満足」要因を追い求める習性があります。「外側からの動機づけ」がされると、やる気に火がつき、仕事の効率はアップし、成果が上がりやすい。目先の業績を上げようとするときには、このやり方が効果的です。
ところが、これが長期に続いていくと、「やらされ感」が「苦しみ」に変わり、やがて「働きがい」を感じなくなっていく。日本人はもともと勤勉なところに、制度としての「外側からの動機づけ」が定着したことで、仕事は苦しいもので、苦しさに耐えることによって給料がもらえる、というパラダイムができてしまいました。
日本経済が右肩上がりで成長し、全体のパイが大きくなる時代には、ハングリー精神旺盛で、一生懸命やったら、給料や賞与をもっともらえるようになり、昇進や昇格のチャンスも手に入れやすかった。インセンティブ、報奨金、表彰なども効果的でした。がむしゃらに働いても平気という人たちも、少なくありませんでした。
しかし、市場が縮小し、豊かな時代が長く続いた結果、“やる気後進国”になってしまったこの状況で、「外側からの動機づけ」に頼って社員を動かすやり方は限界にきているのではないでしょうか。
会社を持続的に成長させるにはどうすればいいか。社員の内側から動機が湧き上がってくるもの大切にして経営をやろう、と会社が創業した頃から考えてきました。それを踏まえて、長年実践してきているのが、今回のテーマである「『社員の幸せ』を一番に考える」経営です。(つづく)