きれいごとを言っているだけでは組織は動かない。企業改革に通じたコンサルタントが明かす秘策。パート2は、部下を動かす“闇の力”だ。
LESSON③【部下を手なずける】
上司の地位を利用したパワーマネジメントで部下を動かすのは得策とはいえない。納得していない部下を権力で無理やり動かそうとしても、面従腹背を招くリスクがある。
部下の心をつかむには、部下のために時間を使うべき。体感としては、自分の仕事時間の7割程度は部下のために使う。実際にはそこまでの時間を使うのは難しいが、それくらいの心持ちでちょうどいい。話を聞くことは、相手の存在を認めて尊重しているということ。部下も「自分のことを気にかけてくれている」と信頼を寄せるだろう。
それらの時間を使って、自分の価値観を部下と共有することも大切だ。大義や志の共有なく仕事を進めようとすると、部下からは上司が自分の欲のために動いているように見えてしまう。改革の根底には、どのような価値観があるのか。共感を得られれば、部下は手足のように動いてくれる。
このとき意識したいのは、自分の価値観を恥ずかしがらずに表現して伝えることだ。普段の仕事を通して自分の価値観は伝わっていると考えがちだが、部下は上司にそれほど強い関心を持っていない。自分について「自分は知っているかどうか」「他人は知っているかどうか」という2軸で整理する「ジョハリの窓」(下図参照)という自己分析のフレームワークがあるが、「自分は知っているが、他人は知らない」という領域は案外広いのだ。
価値観の共有は、日常と切り離された合宿などを活用するといい。私が勤める経営共創基盤は合宿を年に2回行い、会社の理念や方針について徹底的に話し合う。普段は熱い議論に照れがある人も、合宿だといつもと違うスイッチが入りやすいので効果的だ。