失言、暴言、自慢話……気をつけていても、人間関係を悪くしてしまう発言がうっかり出てしまう。謝り方によっては、さらに傷口を広げるケースも数多い。

言ったことをなかったことにする技術はあるのか。コミュニケーションを戦略的に研究する専門家が、関係を修復させる効果的な謝罪の仕方を解説する。

SNSが発達している現在、「なかったこと」も、「あることになってしまう」時代です。たった一言が、命取りになる可能性があります。

#MeTooムーブメント(※)が示すように、世界でハラスメントに対する目は大変厳しくなっています。日本でもセクシャルハラスメントや女性蔑視の発言が問題視されるようになりました。宮城県PR動画はセリフや態度が性的な連想をさせ、「下品で差別的」という批判が相次いだのは記憶に新しいでしょう。昔の感覚で「それくらい」と思っていても、今や通用しません。どのような発言がハレーションを起こしやすいのか、事例を把握したうえで慎重に発言しましょう。

※)セクシャルハラスメントや性的虐待の被害者が「MeToo=私も」と被害体験を告発する運動。
 

仕事やプライベートが好調で、自分に自信を持っている時期も要注意です。自慢げになって、横柄な態度を取ってしまう可能性があります。芸能人のブログ炎上を見てもわかるように、日本では謙虚さが強く求められる傾向があります。自慢はほどほどに。

失言を生みやすい状況にならないよう工夫することも重要です。一番気をつけるべきはお酒の席。ミズーリ・コロンビア大学の研究によると、「酔っ払い」のパーソナリティは主に4つのタイプに分かれることがわかっています。

作家アーネスト・ヘミングウェーのように、飲んでも変わらない「ヘミングウェー」タイプ。もともと親しみやすいタイプで、酔うとさらに明るくなる「メアリー・ポピンズ」タイプ。注意深さ、知性ともに減少し、しらふのときよりも攻撃的になる「ハイド」タイプ。映画でエディ・マーフィーが演じた大学教授のように、もともとは内向的だが外向的になる「ナッティ・プロフェッサー」タイプ。特に自分が「ハイド」タイプだと自覚のある場合は、飲み会での酒量を抑えるようにしましょう。

さて、ここまで注意しても失言してしまった場合、どうすればいいのでしょうか?

取るべき方法は3つあります。

まずはジョークにしてしまうこと。例えば、机に置いてあるメモを見て「字が汚いな」とつぶやいたら、上司から「俺が書いたんだけど」と言われてしまった……そういうときは「字が汚い人は天才肌が多いと聞いたことがありますよ」とユーモアを交えることで、空気が和やかになる可能性があります。ただ下手をすると火に油を注ぐ結果になりかねませんので、機転の利くタイプではない人は細心の注意を払いましょう。

「許される謝罪」の6つの要素とは

時には触れないでスルーすることも重要です。例えば、薄毛をコンプレックスにしている人の前で、「あの芸能人ハゲているな」と言ってしまった……そこで謝ってしまうと、「俺のことをハゲだと思っているのか」と余計その人を傷つける可能性があります。コンプレックスに関わることは触れないほうが賢明です。

最後に謝罪をすること。簡単なように見えますが、テクニックが必要だと私は考えています。

2016年、オハイオ州立大学が「完璧な謝罪法」の研究をしています。わかったのは、「許される謝罪」には6つの要素が必要なことです。

①後悔の念を表す
(例)「本当に申し訳ない」
②原因を説明する
(例)「自分の不手際であった」
③責任を認める
(例)「私の責任である」
④反省の弁を述べる
(例)「猛省をしている」
⑤改善策を提示する
(例)「これまでの行いをただす」
⑥許しを請う
(例)「どうか許していただきたい」