山口明夫氏は若いころ、非常にレベルの高い人たちが集まったチームに配属になった。お客さんやIBMのメンバーたちは上司に、「ここではもたないから、変えてあげたほうがいい」と話していた。しかし上司は、「彼は頑張ってやるから、ここに置いてやってくれ」と頭を下げて回っていたという。山口氏がその話を聞いたのは、10年あまりたってからだった。「陰でみんなが支えてくれたからやってこれた。今度はサポートする側に回りたい」。山口氏が職場の上司や後輩から学び、多大なる影響を受けたというエピソードが満載の後編。

山口 明夫
日本IBM社長
1964年、和歌山県生まれ。87年、大阪工業大学工学部卒業、日本IBMに入社。エンジニアとしてシステム開発・保守に携わる。その後、社長室・経営企画、テクニカルセールス本部長、米国IBM役員補佐などを歴任。2019年より現職。

楠木 建
一橋ビジネススクール特任教授
1964年生まれ。89年、一橋大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授、同大学ビジネススクール教授を経て、2023年から現職。『ストーリーとしての競争戦略』『逆・タイムマシン経営論』など著書多数。