「魅力的品質」と「当たり前品質」という2つの言葉を聞いたとき、みなさんは、どちらがより重要であると考えますか。多くの人は「魅力的品質」のほうを選ぶのではないでしょうか。レストランで常連客を名前で呼ぶようなサービスもまた、魅力的品質のひとつ。一方で、「魅力的品質」ではなく、「当たり前品質」を目指すべきというのが、商品開発におけるセオリ−でもあります。人気のコーヒーチェーンとサイゼリヤを例に、海外でよく知られたフレームワークをご紹介しましょう。
顧客満足度に影響を与える品質を、5つに分類
「狩野モデル(kano model)」をご存じでしょうか。顧客満足度に影響を与える商品やサービスの品質を、5つに分類したもので、品質管理の専門家である東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏により1980年代に提唱されたフレームワークです(図2−1)。海外ではよく知られ、「kano model」の名称で通用しますが、日本のビジネスの世界では、さほどメジャーではないようです。
その狩野モデルが提唱する品質とは、「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」「無関心品質」「逆品質」の5つです。
「当たり前品質」とは、あって当たり前だけれど、なければ不満に感じるもの。「一元的品質」とは、当たり前ではないけれど、あるとうれしくて、ないと不満に感じるもの。「魅力的品質」とは、本来なくても構わないが、あればうれしいもの。
「無関心品質」とは、それがあってもなくても顧客の満足度に影響を与えないもの。最後の「逆品質」は、あると逆に満足度が下がり、ないほうがうれしい品質要素です。