どんな仕事をしても、必ず成功させる人がいる。いつも成果を出す人は、どこが違うのか。どんなタイプの人なのか。逆に、成果を出せない人の特徴とは。(2020年10月5日レター)
私は歴史好きで、あらゆる場面で、戦国時代に置き換えて考える。店長に求めるものは、たった1つ。「城」を取ってくることだ。
店長にとっての「城」とは、利益にほかならない。城が取れる店長は、もれなく数字への意識が高い。数字への意識をどの程度持っているかは、初対面でも10分も話せばわかる。トップライン(売り上げ)、ボトムライン(最終損益)が言えるのはあたりまえで、直近の人件費はいくらか、家賃は現在の相場に見合っているか、EBITDAはいくらか、このくらいはパッと言えてほしい。
月初めのミーティングでは、システムの関係で、前月の数字が締まらないことがある。ならば、30日までの数字に手計算で31日の分を乗せた最新データを持ってきてもらいたい。小売業の戦場は、日々戦局が変わる。昨日までの勝因が、今日の勝因とは限らない。2日前、3日前の数字をもとにした議論では心許ない。最新の数字を軽んじる、緊張感の足りない人とは、話す気がしないとハッキリ伝えている。
コロナ禍で、城を取れる人のもう1つの資質がハッキリした。それは、ゼロベースで考え、すぐに行動できることだ。
コロナウイルスと闘いながらの営業となり、今までの常識が通用しない。かつての非常識が有効な打ち手になることもある。たとえば、路面店は朝10時半から21時くらいまで、およそ半日営業しているのが当たり前だった。それを8時間勤務に1時間の休憩を加えた、9時間営業にした。「ワンオペ」ではなく、複数のスタッフが同時に出勤し、休憩はずらしてとり、同時に退勤する。残業がほぼ生じない。
ふたを開ければ、2020年8月の売り上げ前期比は、眼鏡、コンタクト、補聴器をまとめた数字で101.8%と伸びた。営業時間は2割以上減らしたのに、売り上げは去年を超えた。人件費は、残業代も含めて5000万円も減った。
「会社帰りのお客様をつかまえられない」とか、「シニアの方は朝早いほうがいい」という、もっともらしい理由で営業時間を維持してきたが、この結果だ。困難な戦況で、戦をコントロールするには、過去にとらわれず、ゼロベースで考え、ためらわずに実行する力、その力を持った人が必要なのだ。
一方で、前例踏襲で生き延びてきた人たちは、その座から追われることになるだろう。そういった人にはいくつかの特徴がある。たとえば、頭から決め込んでしまうことだ。
私が「うちも館(商業施設のことを館と呼んでいる)のチラシに載せてもらえないの?」と提案すると、「難しいと思います。前に聞いたとき、ダメと言われましたたから」と答えた社員がいた。「それは、いつのこと?」と聞くと、一昨年だという。館の館長が変わっているかもしれないじゃないか。PRの責任者が変わっているかもしれないじゃないか。過去の、たった1回の失敗で、あっさりとあきらめてしまったのか――。
過去の体験、世の中の常識にとらわれていては、新しい手を打てない。こういった人が率いる店は、進化しない。
何かと、他人事のように言う社員がいる。これはダメだ。会議で、「コロナのせいで、お客様が減っています」と報告してくる。私は、めちゃくちゃ怒る。そんなことは、会議を開かなくてもわかっている。理由を前面に出すのではなく、その中でどう戦い、ライバルに比べて君は勝ったのか、負けたのか、次は勝てるのか、勝てないのか、そこを聞かせてもらいたい。売り上げが7掛けになっているのに、「しょうがない」というスタンスで来られると、非常に残念だ。
うまい言い訳をして逃げる社員は、一番ダメだ。やらないための理由を巧みにつくる。言い訳をしても、その背景に思考がないから、どうにも浅い。浅い答弁で過去の上司が納得してきたから、浅い答弁をし続けているのだろう。
人は変われるか――。その問いに、私はこう答えたい。絶対に変われる。どうすれば、結果を出せない人を変えられるのか、次回以降にお話ししたい。(つづく)